身体科におけるうつスクリーニング検査&研修・臨床研究ソフト 身体疾患患者精神的支援ストラテジー

コンピュータ活用の患者報告式アウトカム尺度

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所社会精神保健研究部研究員
奥村 泰之

(略)

3節.うつ病の患者報告式アウトカム尺度の科学的な性能

「身体科におけるうつスクリーニング検査&研修・臨床研究ソフト (以下、【本ソフト】と略記します)」が採用している、Patient Health Questionnaire-9 (PHQ-9) は、うつ病のPROMsの1つです4)。ここで、PHQ-9の形式は、過去2週間の間に、うつ病の特徴的な9つの症状について苦しむことがあった頻度を、4件法で回答を求めるものです。国際的には、PHQ-9の科学的な性能は、多くの観点から良好であることが示されています5)-7)。日本でも、PHQ-9の科学的な性能は、一部の観点から良好であることが示されています8)9)。PROMsの科学的な性能は、ある集団 (例えば、診療所に受診する20歳〜60歳の人) にとって良好であっても、他の集団 (例えば、周産期の人) にとっては良好ではないことがあります。したがって、本ソフトを利用する上で、PHQ-9の科学的な性能が、自分の診療科の患者さんでも良好であるかどうかを調べることが重要になってきます。

4節.患者報告式アウトカム尺度の実施形式の相違

(略)本ソフトのように、PHQ-9の実施形式を、「紙と鉛筆を利用して、患者さんに記載してもらう方法」から、「コンピュータ画面上に出てくる項目を読んで回答してもらう方法」に変えた場合は、①認知デブリーフィング (cognitive debriefing) と②ユーザビリティテスト (usability testing) をしなければならないと言われています10)。ここで、認知デブリーフィングとは、患者さんが認知している項目や選択肢の意味を言語化し、それぞれの項目に回答する際に何を思い浮かべているかを面接法により調べることを意味します。また、ユーザビリティテストとは、ソフトウェアの使い勝手を、患者さんに確認してもらうことを意味します。本ソフトを利用する上で、自分の診療科の患者さんで、認知デブリーフィングとユーザビリティテストの結果が良好であるかを、調べることが重要になってきます。

5節.まとめ

コンピュータを活用したうつ病の患者報告式アウトカム尺度は、臨床と研究に役立つ可能性にあふれています。可能性の秘めた道具を、科学的に適切な方法で使用経験を積み、より良い道具に磨き上げて頂くことを願っています。

文献

  • 1) U.S. Department of Health and Human Services. Guidance for industry: patient-reported outcome measures: use in medical product development to support labeling claims. 2009. (http://www.ispor.org/workpaper/FDA%20PRO%20Guidance.pdf)
  • 2) 奥村泰之, 亀山晶子, 勝谷紀子, 坂本真士: 1990年から2006年の日本における抑うつ研究の方法に関する検討. パーソナリティ研究 16: 238-246, 2008
  • 3) Mokkink LB, Terwee CB, Patrick DL, et al: The COSMIN study reached international consensus on taxonomy, terminology, and definitions of measurement properties for health-related patient-reported outcomes. J Clin Epidemiol 63: 737-745, 2010
  • 4) Kroenke K, Spitzer RL, Williams JB: The PHQ-9: validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med 16: 606-613, 2001
  • 5) Lowe B, Unutzer J, Callahan CM, et al: Monitoring depression treatment outcomes with the patient health questionnaire-9. Med Care 42: 1194-1201, 2004
  • 6) McMillan D, Gilbody S, Richards D: Defining successful treatment outcome in depression using the PHQ-9: a comparison of methods. J Affect Disord 127: 122-129, 2010
  • 7) Manea L, Gilbody S, McMillan D: Optimal cut-off score for diagnosing depression with the Patient Health Questionnaire (PHQ-9): a meta-analysis. CMAJ 184: E191-196, 2012
  • 8) Muramatsu K, Miyaoka H, Kamijima K, et al: The patient health questionnaire, Japanese version: validity according to the mini-international neuropsychiatric interview-plus. Psychol Rep 101: 952-960, 2007
  • 9) Inoue T, Tanaka T, Nakagawa S, et al: Utility and limitations of PHQ-9 in a clinic specializing in psychiatric care. BMC Psychiatry 12: 73, 2012
  • 10) Coons SJ, Gwaltney CJ, Hays RD, et al: Recommendations on evidence needed to support measurement equivalence between electronic and paper-based patient-reported outcome (PRO) measures: ISPOR ePRO Good Research Practices Task Force report. Value Health 12: 419-429, 2009

(冊子「身体疾患患者精神的支援ストラテジー」から抜粋)